Easter休暇に読んだ本たち

 

卒論執筆が一段落したのち、本を読みまくりました。すべて和書です。

買って読んでなかったものもあれば、新しく買ったものも。特に面白かった本8冊を紹介します。

 

1. 佐々木芽生「おクジラさま ふたつの正義の物語」

在米邦人の著者が、『The Cove』というアメリカ人による、太地町で行われている日本のイルカ漁についてのドキュメンタリー映画を見たのが始まり。著者は、その映画に含まれる視点の偏りに疑問を持ち、捕鯨・イルカ漁賛成派と反対派の両者を取材したバランスのあるドキュメンタリー映画を作ろうとする。

私が面白いと思ったのは、まず、単に漁師さんと反対派のアメリカ人活動家の方を取材するのではなく、さらに幅広い分野の方々を訪ね、多角的な映画を作ろうとしていること。その中でも私のお気に入りの人物は、文化人類学専攻だったアメリカ人ジャーナリスト。アメリカ人活動家の側につくわけでもなく、漁師さんの側につくわけでもなく、お互いを理解しようと、対話をしようと努める。アプローチが、文化人類学っぽいなぁって思わせるところもあるから、好きなのかも。

そして、今大学で社会運動(social movement)について学んでいるというのもあって、反捕鯨派の戦略の分析が細かくされているのもよかったかな。どうメディアを動かすのか、などは今までに読んだ論文と一致するところもあり、アカデミックな面からも楽しく読めた。

おクジラさま ふたつの正義の物語

おクジラさま ふたつの正義の物語

 

 東えりかさんによる素晴らしいレビューがHONZに載ってます。

honz.jp

 

2. 宮下洋一「安楽死を遂げるまで」

高校生のころから興味のあったトピック。高校生の時、医療のcontroversialな話題にすごく興味があった。いわゆる医療倫理。ベタだけど、臓器移植・代理母出産・デザイナーベイビー。安楽死もその一つ。今までは個々のエピソード(オランダやベルギーの例)をネットで拾って読むだけだったんだけど、ついに本を一冊読むことにした。

スペイン在住ジャーナリストの著者は、スイスを皮切りに、オランダ、ベルギー、アメリカ、スペイン、日本へ取材をする。国が変わるごとに、法律、文化、概念などの違いが浮き上がってくる。

この本を読んで、自分の知識がいかに浅はかなものだったかと思い知った。今まで断片的に情報を拾ってきただけだったので、安楽死の中の多様性みたいなものに気がつかなかった。安楽死と言っても、治療をやめることだけではないし、「誰がその命に手をかけるのか」で変わってくる。そして、方法によっては、瞬く間に息をひきとる人もあれば、30分〜1時間苦しみ続けて亡くなる人もいる。安楽死を許されるのは誰か。安楽死を決めていいのは誰か。安楽死尊厳死?自殺?とにかく、さまざまな線引きがありつつも、まだクリアにはなっていない部分も多い。

興味深いケースがいくつかあったのだけれど、いちばん心に残っているのは精神病の患者さんが安楽死を求めている場合。よくあるのは、癌や不治の病で治療してもずっと苦しいだけ、最後は植物人間に...なんてこともあったりするから、もう生を終わらせたいという人たち。けれど、本書で取り扱われている精神病の患者さんのケースは、「痛み」って本当に身体だけ?でも、どうやって測るの?という疑問を突きつけられる。精神病の患者さんが自殺という形で自ら命を絶つことは珍しくないため、安楽死を許すとそのような自殺を促しているだけではないか、という意見もある。しかし、本書のベルギーのケース(安楽死はしなかったが、求めていた)は、典型的な精神病のイメージすら覆される。

しばらく、医療倫理の問題に触れていなかったけど、またわくわくしてきた。

安楽死を遂げるまで

安楽死を遂げるまで

 

 

3. 杉原淳一/染原睦美「誰がアパレルを殺すのか」

つい1年前までは、アパレル業界には興味があり、アパレルメーカーか商社に入ってサプライチェーンに携わりたいと思ってたぐらい。この本を手に取らないはずがない。笑

従来の百貨店・ショッピングセンター型では上手くいかない...ユニクロを表面的に真似しても通用しない...ITを上手く利用すること・発想を転換させること・ライバルはアマゾンやスタートアップだと認識することが必要になるのだと示唆されている。

この本を読むと、地元に4年前ぐらいにできた某大型ショッピングセンターがばかばかしく思えてくる。この本で書かれている失敗を繰り返すだけではないか...と。実際行ってみたけれど、なんかぱっとしないなぁと思ってた。

つい先日ZOZOTOWNのサイトを始めて使ってみて(購入はしていないけど)感動したばかりだったけど、もちろん載っていた。ほかにも、アメリカのスタートアップの例なども載っており、私は何年ぐらい遅れているのだろうと思った。笑

しかし、どれだけ「これがすごい」「あれがすごい」と言われても、試してみるまではなんとも言えないかな。

誰がアパレルを殺すのか

誰がアパレルを殺すのか

 

 

 4. 吉田潮「産まないことは『逃げ』ですか?」

手に取るのは少し早かっただろうか、そんな気もするけど読んでみた。

「女性はライフイベントがあるからね」「女性は結婚・出産があるでしょ」と当たり前のように言われる@就活

私は子どもが欲しいのかよくわからない。子どもは好きだけど。とりあえず、誰かの話をゆるく聞くつもりで読んでみた。

子供のいない著者。結婚、離婚、再婚、いわゆる妊活や不妊治療を経験してきた。子どもは好きじゃない...なのに「子どもが欲しい」と思うときが著者にもあった。必死になって、ちまちま基礎体温計ったり、不妊治療に何十万円もかけたり。著者は、「夫とのつながりを求めたがゆえに子どもが欲しかった」と気づく。そんな人が他にもいるのではないか。また、著者は女性間での子どもいるいないでのマウンティングにも触れる。

子どものほしい・いらないって、どんな感情が織り込まれているのだろう?ちょっとそれが垣間見えた気がした。

産まないことは「逃げ」ですか?

産まないことは「逃げ」ですか?

 

 

5. ドゥニア・ブザール「家族をテロリストにしないために -イスラムセクト感化防止センターの証言」

著者はフランスの文化人類学者。イスラム国やアルカイダに誘われ、激戦地に赴いてしまう若者(本書ではジハーディストと呼ぶ)を止めるのが仕事。一般の人やメディアはよく理解していないために、ジハーディストの特徴について誤解がある。実際は、ムスリムだけではないし、低所得者層とは限らない。中にはユダヤ教信者だっている。テロリストの巧みな戦略を分析し、どんなタイミングでどのような方法を用いて若者達を止めるか。幻術を解くかのように、パチンとすれば、もとの自分に戻るわけでもない。家族や親の期待とすれ違うことだってある。そんなセンシティブでデリケートなプロセスに最前線で取り組むのが著者。

文化人類学者って、こんな仕事にも応用できるのかと感心したのがまず一つ。もちろん、文化人類学者みんながみんな、こんな大変な仕事をできるわけではないけれど。ただの心理学のカウンセラーではできないけれど、文化人類学者の彼女だからこそできるのは、読んでいくうちになんとなくわかる。私個人の見解だけれど、文化人類学者ってある文化のシステムに溶け込み、その中である程度の客観性を保ち、分析するのがうまい。人にもよるけど。先述の「おクジラさま〜」に出てくるジャーナリストの人もそう。このフランス人文化人類学者の場合とはコンテクストが全然違うけれど、本質みたいなものは似てるかな。

彼女のおかげで、我を取り戻した若者もたくさんいるけれど、失敗もあった。この本では、その失敗のケースも扱う。これまた衝撃的なケースだけれど、ネタバレになるから控えておく。

家族をテロリストにしないために:イスラム系セクト感化防止センターの証言

家族をテロリストにしないために:イスラム系セクト感化防止センターの証言

 

 

 6. 長尾彰「『完璧なリーダー』は、もういらない。」

本書は、宇宙兄弟という漫画の登場人物とエピソードを例に挙げ、どんなリーダーが効果的なのかについて論じている。著者の考える効果的なリーダー像と従来の理想とされてきたリーダー像を比較しながら書いており、わかりやすい構造の文章だ。宇宙兄弟の主人公の六太が実は著者の考えるリーダーなのである。宇宙兄弟を読んだことのある人からすれば、びっくりするかもしれない。

私は宇宙兄弟という漫画が好きなのでついつい買ってしまったが、騙されたと思って読んでみたら、すごくわかりやすくて良かった。自分には「リーダーシップがある」と思ってる人・「リーダーには向いてない」と思ってる人に読んでほしいなと思う本。

宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。

宇宙兄弟 「完璧なリーダー」は、もういらない。

 

 

 7. 平良愛香「あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる」

 日本人のゲイの牧師さんの自伝。沖縄で牧師の子供として生まれた著者は、どうやってゲイのアイデンティティを確立してきたのか、どう彼の信じる神と向き合ってきたのか、どのようなプロセスを経て牧師になったのか。キリスト教と性や同性愛の関係性についても議論している。

大学2年目始まる前に出会っていたら良かったなぁと思った本。(2年目にセクシュアリティの授業があり、キリスト教に関するところが難しかった)

私が、彼の考え方で一つとても気に入っているものがある。それは、どの人も100%異性が好き、100%同性が好き、100%両性が好きというわけではなく、グラデーションのようなものなのだということ。これがすごく腑に落ちたのだ。私は人生のうちで1回か2回女性に恋愛感情を抱いたことがある。それをほとんど誰にも言ったことがないけど、自分はもしかするとバイなのかなとずっと考えてた。しかし、彼の考え方に沿うと、ストレート・ゲイ・レズ・バイ...といったラベルにわざわざ合わせなくてもいいような気がする。これが心地よかった。

あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる

あなたが気づかないだけで神様もゲイもいつもあなたのそばにいる

 

 

8. いとうせいこう「『国境なき医師団』を見に行く」 

 著者はジャーナリストではなく作家として国境なき医師団をハイチ・フィリピン・ギリシャウガンダにて取材。現地で奮闘する日本人・それ以外のスタッフ、現地で彼らから医療サービスを受ける人々にインタビューをしたり、活動を観察したり。

私は著者を「フリースタイルラップバトル」の審査員としてよく見ていたのと、これが初めて読む彼の作品だったので、イメージの違いに戸惑うと思いきや、Zeebra(ヒップホップ業界の超大物)の話や著者自身の音楽についても出てくるので、すんなり読めた。著者の文章のスタイルも、直感的に好き。彼が現地でスタッフや患者さんと話しているのが生き生きと伝わってくる。

最近、ソーシャルビジネスに傾倒しすぎてて、プロフェッショナルのNGOを見誤っていたのではないかと思った。チャリティ活動はunsustainableだ、と一括りにしてしまっていた気がする。もちろん寄付があるから成り立つのには変わりがないけれど、どのようにすれば、現地の人たちが国境なき医師団なしで自分たちで医療を回していけるのか、ということを、彼らは真剣に考えているのだ。当たり前だろって思うかもしれないけど、ソーシャルビジネスサイドに傾倒しすぎて、チャリティやNGOは助けてばかりで自立どころか依存を生み出すんだっていう思い込みができてしまっていた。私個人的には、サードセクターを考え直すのにいいきっかけの本だった。

「国境なき医師団」を見に行く

「国境なき医師団」を見に行く

 

 

いろいろ読みつつ、やっぱり自分の専攻に近いものに傾倒していることがわかりました。笑

これからもまた本を紹介していきたいと思います。